明治十三、四年、山沢為造が二十四、五才の頃。兄の良蔵と二人で、お屋敷へ帰って来ると、当時、つとめ場所の上段の間にお坐りになっていた教祖は、
「わしは下へ落ちてもよいから、あんた方二人で、わしを引っ張り下ろしてごらん。」
と、仰せになって、両手を差し出された。
そこで、二人は、畏れ多く思いながらも、仰せのまにまに、右と左から片方ずつ教祖のお手を引っ張った。しかし、教祖は、キチンとお坐りになったまま、ビクともなさらない。
それどころか、強く引っ張れば引っ張る程、二人の手が、教祖の方へ引き寄せられた。二人は、今更のように、「人間業ではないなあ。成る程、教祖は神のやしろに坐します。」 と、心に深く感銘した。