逸話篇

29. 三つの宝

ある時、教祖は、飯降伊蔵に向かって、

 「伊蔵さん、掌を拡げてごらん。」

と、仰せられた。

 伊蔵が、仰せ通りに掌を拡げると、教祖は、籾を三粒持って、

 「これは朝起き、これは正直、これは働きやで。」

と、仰せられて、一粒ずつ、伊蔵の掌の上にお載せ下されて、

 「この三つを、しっかり握って、失わんようにせにゃいかんで。」

と、仰せられた。

 伊蔵は、生涯この教えを守って通ったのである。