明治九年か十年頃、林芳松が五、六才頃のことである。右手を脱臼したので、祖母に連れられてお屋敷へ帰って来た。すると、教祖は、
「ぼんぼん、よう来やはったなあ。」
と、仰っしゃって、入口のところに置いてあった湯呑み茶碗を指差し、
「その茶碗を持って来ておくれ。」
と、仰せられた。
芳松は、右手が痛いから左手で持とうとすると、教祖は、
「ぼん、こちらこちら。」
と、御自身の右手をお上げになった。
威厳のある教祖のお声に、子供心の素直さから、痛む右手で茶碗を持とうとしたら、持てた。茶碗を持った右手は、いつしか御守護を頂いて、治っていたのである。