逸話篇

117. 父母に連れられて

 明治十五、六年頃のこと。梅谷四郎兵衞が、当時五、六才の梅次郎を連れて、お屋敷へ帰らせて頂いたところ、梅次郎は、赤衣を召された教祖にお目にかかって、当時煙草屋の看板に描いていた姫達摩を思い出したものか、「達摩はん、達摩はん。」と言った。
 それに恐縮した四郎兵衞は、次にお屋敷へ帰らせて頂く時、梅次郎を同伴しなかったところ、教祖は、
 「梅次郎さんは、どうしました。道切れるで。」
と、仰せられた。
 このお言葉を頂いてから、梅次郎は、毎度、父母に連れられて、心楽しくお屋敷へ帰らせて頂いた、という。