逸話篇

124. 鉋屑の紐

 明治十六年、御休息所普請中のこと。梶本ひさは、夜々に教祖から裁縫を教えて頂いていた。
 ある夜、一寸角程の小布を縫い合わせて、袋を作ることをお教え頂いて、袋が出来たが、さて、この袋に通す紐がない。「どうしようか。」と思っていると、教祖は、
 「おひさや、あの鉋屑を取っておいで。」
と仰せられたので、その鉋屑を拾うて来ると、教祖は、早速、器用に、それを三つ組の紐に編んで、袋の口にお通し下された。
 教祖は、こういう巾着を持って、櫟本の梶本の家へ、チョイチョイお越しになった。その度に、家の子にも、近所の子にもやるように、お菓子を袋に入れて持って来て下さる。その巾着の端布には、赤いのも、黄色いのもあった。
 そして、その紐は鉋屑で、それも、三つ組もあり、スーッと紙のように薄く削った鉋屑を、コヨリにして紐にしたものもあった。