逸話篇

129. 花疥癬のおたすけ

 明治十六年、今川聖次郎の長女ヤス九才の時、疥癬にかかり、しかも花疥癬と言うて膿を持つものであった。親に連れられておぢばへ帰り、教祖の御前に出さして頂いたら、
 「こっちへおいで。」
と、仰っしゃった。恐る恐る御前に進むと、
 「もっとこっち、もっとこっち。」
と、仰っしゃるので、とうとうお膝元まで進まして頂いたら、お口で御自分のお手をお湿しになり、そのお手で全身を、
 なむてんりわうのみこと なむてんりわうのみこと
 なむてんりわうのみこと
と、三回お撫で下され、つづいて、又、三度、又、三度とお撫で下された。ヤスは、子供心にも、勿体なくて勿体なくて、胴身に沁みた。
 翌日、起きて見たら、これは不思議、さしもの疥癬も、後跡もなく治ってしまっていた。ヤスは、子供心にも、「本当に不思議な神様や。」と思った。
 ヤスの、こんな汚ないものを、少しもおいといなさらない大きなお慈悲に対する感激は、成長するに従い、ますます強まり、よふぼくとして御用を勤めさして頂く上に、いつも心に思い浮かべて、なんでも教祖のお慈悲にお応えさして頂けるようにと思って、勤めさして頂いた、という。