逸話篇

186. 結構なものを

 明治十九年三月中頃、入信後間もない中西金次郎は、泉田藤吉に伴われて、初めておぢばへ帰り、教祖にお目通りさせて頂いた。
 教祖は、お寝みになっていたが、「天恵四番、泉田藤吉の信徒、中西金次郎が帰って参りました。」と取次いで頂くと、直ぐ、
 「はい、はい。」
と、お声がして、お出まし下された。
 同年八月十七日に帰った時、お目通りさせて頂くと、月日の模様入りのお盃で、味醂酒を三分方ばかりお召し上がりになって、その残りをお盃諸共、お下げ下された。
 同年九月二十日には、教祖にお使い頂きたいと、座布団を作り、夫婦揃うて持参し、お供えした。この時は、お目にはかかれなかったが、後刻、教祖から、
 「結構なものを。誰が下さったのや。」
と、お言葉があったので、側の者が、「中西金次郎でございます。」と申し上げると、お喜び下され、翌二十一日宿に居ると、お呼び出しがあって、赤衣を賜わった。それはお襦袢であった。